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委託研究、共同研究は増加している背景
製薬企業、バイオベンチャーでは、外部の受託研究会社、大学、研究開発機構などと共同研究や研究開発を委託を行っているケースがあります。
最近では、海外のグループ会社、大学との共同研究も増えており、移転価格税制などに留意する必要があります。
委託研究、共同研究が増加している背景としては、競合製品(代替技術)との競争が激しくなり製品化までの時間の短縮がもとめられてきていること、研究開発費予算の削減などがあげられます。
委託研究、共同研究を行っている場合の留意点について記述してみたいと思います。
企業会計上の留意点
企業会計上、税務上も共通して問題となる点は、いつ費用(損金)として計上するのか(認識)の問題です。
特に、委託研究や共同研究では、契約一時金(アップフロント)やマイルストーン・ペイメントなどが発生し、契約一時金などをいつ費用として計上するかが問題となります。
成果物や進捗度がわかる証憑を委託先から入手できるかが大きなカギとなります。
成果物や進捗度がわかる場合には、進捗に応じて費用化すればよいのですが、契約書上、成果物や進捗を報告が明記されていない場合でも、客観性と規則性を確保したかたちので費用計上がもとめられます。
通常、研究開発フェーズやテーマが設定されますので少なくとも、フェーズやテーマごとに償却(費用計上)することが必要となり、全体が終わるまで「前払費用」や「前渡金」として計上し続けることができない点に留意する必要があります。
契約一時金(アップフロント)とは、契約時に固定金額を一括して支払われるもののことをいいます。
マイルストーン・ペイメントとは、研究開発をフェーズに区切り、フェーズが完了するごとに支払う支払のことをいいます。
゛研究開発費はすべて発生時に費用として処理しなければならない。したがって、例えば、外部に研究開発を委託した場合は、研究開発の内容について検収を行い、利用可能になった時点で費用として処理すべきであり、契約金等は前渡金として処理しなければならない。”(※1)
゛例えば、一つの大きな研究開発テーマがいくつかの詳細な研究開発テーマに細分化されているような場合で、契約に基づいて詳細な研究開発テーマごとに検収、支払を行っているような場合で、契約に基づいて詳細な研究開発テーマごとに検収、支払を行っているときには、詳細な研究開発テーマごとの検収時に研究開発費として処理することとなり、これを大きな研究開発テーマ全体の完了時までに前渡金等として資産に計上しておくことは認められないことに留意する必要があります。”(※2)
税務上の留意点
税務上の留意点としは大きく3つのことがが重要となります。
- 公立大学、特定公益増進法人等に寄附する場合に、全額損金とすることができるのか?寄附金課税上の特例を受けることができるのか?(※3)
- 教授等の個人に支出する場合に、寄附金認定や使途秘匿金として認定されないか?
- 海外グループ会社に委託、共同研究する場合に、移転価格税制の適用がないか?(※4)
その他の留意点
研究開発費に関しては、その他にも過去事例でも不正支出が比較的多く発生しています。
- 物品購入に関する不正(目的外使用、架空の取引により経費を請求し,支払われた代金を預け金として管理等)
- 旅費・給与に関する不正(架空支出)
対応の一つとして、契約書上で、資金使途などについての監査条項を付与し、実際に監査することも考えられます。
歴史的に、比較的寛容に取り扱われてきた「研究開発費」ですが、コーポレートガバナンスとして透明性がもとめられる現在においては、研究パートナーとも一定の緊張感を保つことが重要な時代にであると思います。
「研究開発費」でお困りの場合には、是非、ご相談ください。
(※1)研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針3
(※2)「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A」についてQ2
(※3)法人税法37条1項
(※4)租税特別措置法66の4