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【自社利用目的ソフトウェアが増加している背景】
クラウドサービスの発展によって、自社利用目的ソフトウェアとして資産計上しているケースが増加しています。
以前であれば、ソフトウェアも顧客ごとにカスタマイズして納入する方式から、パッケージとして開発したうえでサーバー上に開発したソフトウェアを置き、顧客はネット経由で利用するケースが増加しています。
背景には、パッケージソフトを利用することへの顧客側のなれ、最新の状態にアップデートされたソフトウェアを利用したいという顧客のニーズ、開発費用をおさえたいとの顧客のニーズがあることがあげられます。
会計上で自社利用目的として資産計上されるケースは2つです(※1)。
- 外部へのサービス提供することによって将来の収益獲得が確実に見込まれるケース
- 社内利用によって費用削減効果が確実に見込まれるケース
今日は、自社で開発して外部にサービスするケース(上記1.)を想定して、「ソフトウェア」として資産計上する要件をIFRSと日本基準を対比させながら考えてみたいと思います。
【日本基準】
日本基準での、資産計上できるようになる時期は、将来の収益が確実になった時点とされています。
具体的に資産計上の要件を定めているわけではないので、実務上、研究開発段階として費用処理するべきか、「(自社利用目的)ソフトウェア」として資産計上するべきか実務上判断に迷います。
会社ごとに将来の収益が「確実」になったと判断するポイントや判断する社内資料の様式が異なることが背景としてあげられます。
゛自社利用のソフトウェアの資産計上の検討に際しては、そのソフトウェアの利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であることが認められるという要件が満たされているか否かを判断する必要がある。その結果、将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合は無形固定資産に計上し、確実であると認められない場合又は確実であるかどうか不明な場合には、費用処理する。 ”(※2)
゛自社利用のソフトウェアに係る資産計上の開始時点は、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる状況になった時点であり、そのことを立証できる証憑に基づいて決定する。そのような証憑としては、例えば、ソフトウェアの制作予算が承認された社内稟議書又はソフトウェアの制作原価を集計するための制作番号を記入した管理台帳等が考えられる。 ”(※2)
【IFRS】
自社で開発して外部にサービスを提供することを想定しているケースを考えると日本基準とIFRSでは、以下の差が見られます。
資産計上をする時点については、日本基準が「収益が確実になった時点」としているのに対して、IFRSでは6つの要件を全て満たす必要があり、状況によっては、採用する会計基準により会計処理が異なるケースも考えられます。
【まとめ】
日本基準で会計処理を行っている場合においても、IFRSで資産計上の要件が6つ全てそろうことを要求しており厳密に考えていることは参考になると思います。
監査を行う立場でも、収益獲得能力や費用削減効果が確実か、立証できる証憑は揃っているのか、関連する内部統制を理解することは重要となります。
(※1)研究開発費等に係る会計基準四3
(※2)研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針11.12
(※3)IAS第38号51、57号